私有地と緑

Private lands and urban greenery

アジア大都市の緑被率は決して低くありませんが、緑の大部分が私有地所に存在しています。私自身、町田市の「緑が多い」と言われてきた住宅地の古い家で生まれ育ちましたが、近隣の土地所有細分化が進行し、気がつけば緑は失われていました。

日本国内の多くの役所の緑地課を訪問するたびに、担当者の方が「結局日本の緑の問題は、土地問題そのものです」とおっしゃるのを、当時緑地研究室に籍を置いていた私は無念な思いでうかがいました。アジア各都市の役所を訪問調査する中でも、同様の思いを抱きました。現場実務レベルで、公園計画と土地利用計画は全く分離しており、何はともあれ「私有地の緑」に関する基礎的知見の提供が緊急の課題であると強く認識しました。歴史的に私的土地所有権が強固であり、Gated Subdivision開発が主流となるアジア都市においてはなおさらのことです。

こうした観点から、アジア各都市圏の郊外住宅地域において、地籍図や高解像度衛星画像を用いながら、地所スケールでの現地緑地の量的・質的調査を進めます。また、私有緑地の生態系サービスも検証していきます。「私有地の緑」がある程度自律的に存続しうる機構が存在するか否かを調べ、持続性を担保する制度のあり方について探求します。

キーワード:アジア都市、土地所有、地籍図、緑

代表論文